雨の中たくさんのご来場を頂きありがとうございました。

遅くなりましたが、演奏会報告を行います。


プログラム ♪♪♪♪


ごあいさつ

本日は合唱団AUG(オーギュメント)の第17回演奏会にお越し頂きましてありがとうございます。心よりお礼申し上げます。
AUGは1984年創立で、今年20才になりました。20才の演奏会は「うた」をテーマに選曲しました。
「うれしさのあまり、言葉から自然にうたが生まれ出た・・・」、「Cantate Domino(新しい歌を主に向かって歌え)」、「歌の翼に・・・」、「うたうと、うたうと・・・それが私のよろこび・・」など、今回の曲の中には歌を愛するものたちの気持ちが表れている言葉があふれています。
本日のステージでは思いを同じくする仲間と歌える幸せをかみしめられることに感謝しつつ、精一杯の演奏をしたいと思います。
どうぞごゆっくりお聴き下さい。




● 第1部オープニング         指揮:岡村好和 ピアノ:津久井圭子

  うたよ!              
作詞:まど・みちお  作曲:木下牧子   
みなさんは「うた」が生まれたはじめの日のことを知っていますか?
この曲はそのことを私たちに、しぜんに伝えてくれます。限りなく暖かいまなざしによる自然をたたえながら…。 
私は大好きなこの曲を選曲に持っていった日を思い出しました。歌うことってこんなに楽しいんだと感じさせてくれる曲だったので、歌うことが大好きなAUGにはぴったりかしらと。「うた」がテーマのオープニングにもぴったりだったので、驚きとうれしさで一杯です。この曲は混声合唱曲集「うたよ!」の一曲目。技術的にはシンプルに、音楽的には大人向けに味わい深く作られています。まど・みちおさんの詩は分かりやすくシンプルなのに、心に響いて、しぜんに歌がきこえてくるかのようです。木下牧子さんの美しいメロディーとそれを支える堂々としたハーモニーも心地よいです。そしてもう一つこの曲に欠かせないのが、ピアノ伴奏です。序章では重厚な和音が少しずつ高くなり、一つの物語の始まりを予感させます。物語が始まると流れるようなメロディーが歌をやさしく包んでくれます。(伴奏者の津久井圭子さんは、水の流れをイメージされているそうですよ。)素敵なピアノなので、こちらにも耳を傾けてくださいね。いろんな魅力の詰まった「うたよ!」年齢にかかわらず、幅広く楽しんでいただけるかと思います。どこまで表現できるか分かりませんが、みなさんの心に響く演奏となれば幸いです。[佐竹美香]




● Cantate Domino -新しい歌を主に向かって歌え−   指揮:津久井信夫

  Cantate Domino   
作曲 Hans Leo Hasslar
  Cantate Domino   
作曲 Claudio Monteverdi
  Cantate Domino   
作曲 Heinrich Schutz
  Cantate Domino   
作曲 Vytautas Mi?kinis

[歌詞の背景] 
旧約聖書の中の詩篇は、150編の詩からなる賛美と祈りの書です。その成立時から音楽とともに唱えられていたものと考えられますが、キリスト教音楽の歴史の中でも古今の作曲家による詩篇歌、詩篇の歌詞を基にした曲が作られてきました。"Cantate Domino canticum novum" 「 新しい歌を主に向かって歌え。」で始まる詩篇は、3編あります。今回取り上げた4曲は、それぞれ以下の歌詞をもとに作曲されています。(対訳をご参照下さい。)

ハスラー:    96篇1-3節
モンテベルディ: 96篇1-2節、98編1節、5節
シュッツ:   149篇1-3節
ミスキニス:   96篇1-2節、98編1節、5節

詩篇を表すPsalmus(ラテン語)、Psalm(英語)は、ギリシャ語の「弦楽器伴奏で讚美する」という言葉の「プサロー」に由来しています。歌詞の中に出てくるpsalmi, psalterio, psalantも語源を同じくする言葉です。竪琴や太鼓にあわせて神を賛美する、という内容が詩篇の中心であり、今回の演奏会の主題「うた」にもふさわしいと思い、いろいろな作曲家による「Cantate Domino」を集めてみました。

[作曲家と時代] 
本日は、作曲家の年代順に演奏いたします。

最初の3名の作曲家は、いずれもルネッサンスからバロック初期に前後して活躍した音楽家です。当時、経済的繁栄を謳歌していたベネチアは、アンドレア・ガブリエリ(Andrea Gabrieli, 1510-1586)とその甥ジョバンニ(Giovanni Gabrieli,1557-1612)が、相次いでオルガン奏者を務めたサン=マルコ大聖堂を拠点に欧州の音楽の中心地としても栄え、外国の音楽家も数多く勉強に来ていました。

ハスラー(Hans Leo Hassler, 1565-1612)は、20代初めにベネチアに留学し、晩年のアンドレア・ガブリエリに師事し、当時のイタリア音楽の成果を最初にドイツに持ち帰った巨匠と言われています。帰国後、アウグスブルク、ニュルンベルク等で活躍し、貴族にも列せられました。今回取り上げた曲もよく知られた作品で、同声合唱版もしばしば演奏されます。

一方、イタリアのクレモナ生まれの
モンテベルディ(Claudio Monteverdi, 1567-1643)は、マントヴァ公の宮廷楽師を勤める傍らマドリガル作者として名をあげてゆき、ジョバンニ・ガブリエリの死後、一時停滞したサン=マルコ大聖堂に楽長として招かれ、教会音楽とともに舞台音楽(バロックオペラ)の隆盛をもたらします。今回演奏する曲は、1620年に出版された曲集に収められていますが、複数声部同士の掛け合い、舞曲的モチーフ等に、それぞれサン=マルコ大聖堂でよく用いられた二重合唱やマドリガルの影響が感じられます。

シュッツ(Heinrich Schutz, 1585-1670)はベネチアに二度留学しました。最初は1609年からで、晩年のGiovanni Gabrieliに師事し、愛弟子として、死の床についた師匠から指輪を贈られたと伝えられています。後にドレスデンの宮廷楽長としてザクセン候に仕えたシュッツは、1628年再びベネチアに学び、この折にモンテベルディからも大いに影響をうけたものと思われます。今回取り上げる曲は、二度目のイタリア遊学に先立つ1625年に出版された詩篇による聖歌集に収められており、歌詞の内容にあわせて器楽的モチーフと声楽的モチーフをうまく使い分けた名曲として、よく知られています。

最後に演奏するのは、現代リトアニアの作曲家
ミスキニス*(Vytautas Mi?kinis, 1954- )の作品です。(*「ミシュキニス」と発音するのが正しいようですが、ここでは「ミスキニス」と表記します。)ラトビア、エストニアとあわせたバルト三国は合唱活動の盛んな国として知られていますが、ミスキニスも7歳から著名なAzuoliukas Boys Choirで歌い始め、現在は同合唱団の音楽監督として演奏活動を行う傍ら、リトアニア音楽アカデミー合唱指揮法教授、リトアニア合唱連盟理事長などの要職でも活躍し、作曲では宗教曲の他にポピュラー音楽の分野にもわたっています。本日取り上げる曲は1997年のもので、シンプルなモチーフとリズミカルな伴奏からなる主題部と神秘的な中間部がうまく対比され、宗教的情熱と内面性を現代にふさわしい形で表現した佳品です。

"Cantate Domino canticum novum" という同じ歌詞にこめられた賛美の祈りを、それぞれの時代のそれぞれのスタイルで響かせることができれば幸いです。[津久井信夫]



[津久井信夫]

● 世界の愛唱曲          指揮:永井英晴、岡村好和 ピアノ:津久井圭子

  楽に寄す(An Die Musik)       
        
作曲:F.Schubert(編曲:中村仁策) 作詩:F.R.v.Schober(訳詞:松山伸)
  歌の翼に(Auf Flugeln des Gesanges) 
        
作曲:F.Mendelssohn(編曲:中村仁策) 作詩:H.Heine(訳詞:門馬直衛)
  ソルベーグの歌(Solvejg's Lied:組曲「ペールギュント」より)
        
作曲:E.Grieg(編曲:中村仁策、訳詞:堀内敬三)
  夜のとばりふかく(歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲)
        
作曲:P.Mascagni(編曲、作詞:中村仁策)

楽に寄す(An die Musik)             Franz Schubert 1797-1828

シューベルトは、幼少より聖歌隊において変声期が来るまで美しいボーイソプラノで歌っていただけに、合唱作品も多く、現在演奏されている曲は宗教曲を除いても相当な数をあげることができる。その作品の数々は小規模で短いながら、叙情的な美しい旋律、多彩な和声感、そしてその中にキラリと光る天才の炎によって、魅力的である。


歌の翼に(Auf Flugeln Gesanges)     Felix Mendelssohn-Bartholdy 1809-1847

メンデルスゾーンは、美しい旋律と優れた和声感覚をもち、激情的なところがなく、それはあふれんばかりのロマン的な感情を古典的知性で抑制し、ことに合唱曲においては、人声の微妙なニュアンスをよく捉えてあらゆる音域と音程を自由に駆使し、天衣無縫の美しいパートの動きと和声の美を作り出している。


ソルベークの歌(Solvejg' Lied)          Edvard Grieg 1843-1907

グリーグはドイツに学び祖国ノルウェーのフィヨルドを愛し、北欧的な哀愁のある美しい景色の音楽を書き続けた。ノルウェーの風物や農民の姿など、グリーグの音楽は多くの民謡が取り入れられ、祖国ノルウェーの国民学派を作り上げる作曲家である。1875年(32)才)に劇音楽「ペール・ギュント」を作曲、翌年の2月24日にクリスティニア(現在のオスロ)の国民劇場で初日を迎えその年の内に36回も上演された。
この作品は、劇付随音楽のなかの最高傑作といわれ、北欧的な抒情のよく表れたグリーグらしい美しい音楽となっている。
ことに「オーゼの死」や「ソルベーグの歌」などは、大変有名である。


夜のとばりふかく(歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲)
                         Pietro Mascagni 1863-1945

マスカーニは、旅回りのオペラ団の指揮者などをしながら作曲を続けた。1888年に音楽出版社のソンゾーニョ社による一幕物オペラの懸賞募集に応募し、第1位となり、90年に初演された「カヴァレリア・ルスティカーナ」はその名前を一躍世界にとどろかせた。人間のありのままの感情のぶつかり合いが赤裸々に描かれている。その中間で舞台に誰もいなくなってから演奏される美しくも悲しい「間奏曲」は、実に大きな効果を持っている。



以上、毎日の生活には全く役に立たないムダ知識でした。この世に男と女がある限り恋の炎が消えることはない(間違いない)。甘い恋、哀しい恋、実らぬ恋といろいろ取りそろえてあなたの心にズームイン。         [岡村好和]




〜休憩〜

● 第2部オープニング      指揮:岡村好和 ピアノ:高橋宏幸、津久井圭子

  壁きえた(混声版) 
作曲:新実徳英 作詞:谷川雁
作曲家 新実徳英 1947年 名古屋市生まれ、1970年 東大工学部卒業、1975年 東京芸大音楽部作曲科卒業、1977年 同大学院研究科卒業

東大在学中にコールMegに所属し合唱についての見識を広めた。スエズ運河が造られたとき、当初は人々の手によって作業が進められていました。このとき、ダイナマイトの発明があり、労力と時間が飛躍的に短くなりました。このダイナマイトが人々の命を奪う物にも形を変えています。世界中の人々が安心して、そして一緒に食事ができる喜びを感じる日の来ることを願って。[岡村好和]




● 混声合唱のための「うた」 作曲:武満徹        指揮:永井英晴 津久井信夫

  翼          
詞 : 武満徹
  うたうだけ      
詞 : 谷川俊太郎
  島へ         
詞 : 井沢満
  小さな部屋で     
詞 : 川路明
  ○と△の歌      
詞 : 武満徹
  小さな空       
詞 : 谷川俊太郎
混声合唱のための「うた」

作曲家:武満徹の名前をご存知の方も多いことでしょう。
彼は紛れもなく20世紀わが国のもっとも偉大な作曲家です。

1930年東京に生まれた彼は、殆ど独学で作曲活動に入ります。
‘50年処女作「2つのレント」を発表、翌年作曲家:湯浅譲二らともに多方面の芸術家からなる「実験工房」を結成。

‘57年結核の病床で死を意識しつつ作られたという「弦楽のためのレクイエム」は、その後来日したストラビンスキーに絶賛され一躍人々の注目を集めることとなります。
しかしその後、彼の評価をいち早く認めたのは日本よりも欧米の音楽界でした。1967年ニューヨーク・フィル125周年記念に委嘱され、小澤征爾の指揮により初演された、琵琶と尺八とオーケストラによる「ノヴェンバー・ステップス」の成功によりその名は世界に知れ渡るところとなりました。

音楽的にはドビュッシーやメシアンらのフランス音楽の影響が大きいと言われますが、東洋的なあるいは日本的な素描をその奥に深く取り込んだ作品も多く、他のいかなる個性とも異なった「独創的音楽世界」を構築せしめた傑作を多く残しています。
死後8年を経過した今日でもその名声は衰えることを知らず、むしろ日本より欧米で続く高い評価により、現在もなお世界中の音楽プログラムに「武満徹」の名前が登場しています。
また無類の映画好きとしても有名で、初期の創作活動の多くに映画や演劇・TV番組への付随音楽といったものを多く残しているのも特徴でしょう。
作品のタイトルだけを取っても独創的です。(年代順に)
管弦楽/室内楽作品にグリーン・地平線のドーリア・アステリズム・カシオペア・カレトーン・鳥は星形の庭に降りる・遠い呼び声の彼方へ・オリオンとプレアディス・虹に向かってパルマ・夢窓 等々。

映画の音楽参加としても、膨大なものがあります。
顔役・不良少年・太平洋一人ぼっち・怪談・他人の顔・燃えつきた地図・どですかでん・化石の森・卑弥呼・桜の森の満開の下・天平の甍・乱・利休・黒い雨・豪姫・写楽。

彼はまたポピュラー音楽との結びつきも深く、小室等・井上陽水などとの親交のもとフォークソングと呼ばれる類の作品も残しています。
○と△の歌・死んだ男の残したものは

さらに今回取り上げます 混声合唱のための「うた」は、主に東京混声合唱団のアンコールピースとして書かれた小品集で、和声展開の独自性の上にメロディーラインのはっきりした美しい作品の数々は、私達合唱を試みるもの憧れの「うた」です。
翼・うたうだけ・島へ・小さな部屋で・小さな空・・・お聞きなったメロディーも登場するでしょう。

武満作品のいずれとも同様、ゆっくりした時間の流れ/テンポ設定の中に展開する独創的世界をぜひお聴き下さい。

最後に武満作品の膨大ディスクの中から、ご推奨をいくつか。
今回取り上げます「うた」をジャズ歌手の石川セリが歌っているものあります。
また管弦楽作品の「セレモニア」は、笙とオーケストラのコラボレーション。
「系図〜若い人たちのための音楽詩」は、谷川俊太郎の詩を朗読しながら曲が進んでゆく、この2作品の入ったCDは何種類か発売されています。
一度これを期に 日本の誇る「武満徹」に触れてみてください。    [永井英晴]




● ポップス・オリジナルステージ 編曲:高橋宏幸  指揮:永井英晴、ピアノ:高橋宏幸

                 
   ヴァイオリン:小山紀代、山川玲子
                    ヴィオラ  :斉藤由紀
                    チェロ   :辻寛子

  風になりたい   ( '95 THE BOOM )
  言葉にできない  ( '81 小田和正 )
  恋におちて    ( '85 小林明子 )
  LOVE LOVE LOVE  ( '95 DREAMS  

最後に取り上げます4曲のポップス曲。
いずれに関連性も連続性も持ち合わせていません。
選曲の意図も、「ただ歌ってみたい、聴いていただきたい」。
そして「後世に残してみたいメロディーだから」というもの。

〈言葉にできない〉は、1981年発表のオフコースのナンバー。

〈恋におちて〉は、1985年のTVドラマ主題歌。「不倫」という社会現象を流行語にした作品「金曜日の妻たち」に与えられたセンチメンタルなメロディー。

そして1995年発表の「ドリカム」ナンバー
〈LOVE LOVE LOVE〉と沖縄音楽のブームの先駆けともなった〈風になりたい〉

うたは、人の心に何時まで残っていくものなのでしょう。
時として、名曲の中にどこかで埋もれて忘れ去られてゆく作品があります。
ましてやTVを中心としたメディア社会により送り出された作品の多くが、そんな憂き目に遭うと考えるのは私だけでしょうか?

今回の4作品のいずれも、テレビコマーシャルの中で復活を果たしたものばかり、「ああ、あれ。いい歌だよね」。

それをずっとずっと心の中に残しておきたくて・・
選曲の意図は、単に私の「一人よがり」でした。
「あなたに会えて本当によかった。嬉しくて嬉しくて言葉にできない。」お聴き頂きますすべての皆様に感謝を込めて。[永井英晴]



[永井英晴]







次回の第18回演奏会をご期待ください。

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2nd.Jul.2004 V1.14